一輪奏

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5 教訓の事

 次に清盛の標的になったのは、畏れ多くも後白河法皇。清盛は貞能を呼び、「今後もあることないことを法皇に吹き込むものがあれば、法皇は平家追討の院宣を出すかもしれん。そうなれば当家は朝敵だ。世が静まるまで、法皇を鳥羽の北殿にお移しするか、ここ西八條にお越しいただくかせねばなるまい」と話します。

 主馬判官(しゅめのほうがん)盛国が小松邸へ駆けつけてこのことを報告すると、重盛は大急ぎで西八条邸へ。

 西八条の邸には清盛を始め、一門の幹部たちが鎧をつけてずらりと並び、今にも出陣しようかという雰囲気。そこへ烏帽子・直衣姿で指貫の衣ずれの音をさせながら登場した重盛、謀議などまるで他人事のよう。

 これには鎧着用済みの清盛も恥ずかしくなったのか、あわてて着物を一枚羽織りますが、胸元から鎧が見えてしまうので、袷を引っ張って鎧を隠そうと必死。

 父も子もしばらくは無言でいましたが、清盛が沈黙を破って「ほとぼりを冷ますために、しばらく法皇を鳥羽の北殿にお移しするか、ここ西八条にお越しいただくかしようと思うが、どう思う」と尋ねると、清盛が言い終わらないうちに重盛ははらはらと泣き出してしまいます。

 「どどどどうしたのだ重盛」と驚く清盛に重盛は、

 「この仰せを聞くに、一門の運はもはや尽きてしまったのだと思えてなりません。人の運命の傾くときには、必ず悪事を思い立つものです。凡人の私が内大臣という位に上り、また平家一門が莫大な所領を得て栄えているのも、朝恩ではないのですか」と涙ながらに訴えます。

 次章「烽火の事」に続く。


 * * *

 始まりました、重盛のお説教。鎧を隠そうとする清盛、可愛すぎですよ~!原文は、

 「あの姿に腹巻を着て向かはん事、さすがに面はゆう恥かしうや思はれけん、障子を少し引き立てて、腹巻の上に、素絹の衣をあわて着に着給ひたりけるが、胸板の金物の、少しはづれて見えけるを、かくさうと、しきりに衣の胸を引き違へ引き違へぞし給ひける。」

 と、慌てふためいている様子が目に浮かぶ秀逸な描写です。ほんっと清盛、おもしろいなー。

 しかも、この直後に重盛に「かりにも出家なさった身で、鎧なんか付けて…」と言われているので、バレバレなんです。

 「腹巻」というのは寅さんやバカボンのパパがしているやつではなくて、鎧の一種です。合戦のときにつけるフル装備の鎧(特に「大鎧」といいます)よりも、手軽な感じ。
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by stan-nak | 2013-03-20 13:18 | 平家物語 巻二 | Comments(0)

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