一輪奏

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4 禿童の事

 平家はいよいよ栄華をきわめ、時子の弟・時忠は「この一門にあらざらん者は、みな人非人たるべし」などと言ってのけます。

 しかしまあそれだけ繁栄すれば、悪し様に言う人も出てくるのが世の常。かのヒルズ族だって、「金の亡者」などと言われたものです。ところが平家に関しては、そんなことを言う人はいませんでした。

 なぜといえば平家には、清盛プロデュースによる少年部隊がいたからです!

 なんだそりゃ、って?えー、まあ原文を見ましょう。

 「入道相国の謀(はかりごと)に、十四五六の童(わらわべ)を三百人すぐって、髪を禿(かぶろ)に切りまはし、赤き直垂を着せて、召し使はれけるが、京中に充ち満ちて、往反しけり。」

 なになに、清盛は14~6歳の少年を300人集め、おかっぱ頭にし、赤い直垂を着せて京の街中に放ったと。

 「平家の御事悪し様に申す者あれば、一人聞き出さぬ程こそありけれ、余党に触れ廻し、かの家に乱入し、資財雑具を追捕し、その奴を搦めて、六波羅殿へ率て参る。」

 もし平家の悪口など言う者があれば、禿の一人にでも聞かれたら最後。直ちに他のメンバーに伝えられ、禿たちはその者の家に押し入って家財道具を没収し、本人を捕縛して六波羅へ連行。

 こ、こわー!

 「されば、目に見、心に知るといへども、詞(ことば)に顕して申す者なし。」

 うーん、そりゃそうだ。

 「六波羅殿の禿とだに云へば、道を過ぐる馬・車も、皆よきてぞ通しける。」

 うわー…なんか、目に浮かぶな(笑)。
ふんぞり返って、道の真中をのっしのっしと歩いてたんでしょうね。
道の脇では京の人たちが、

 「ほら、六波羅の禿や」
 「おお憎。あないデカいツラしよって、高平太の犬やないか」
 「しーっ。聞こえるで、赤直垂に」

 …みたいな会話を交わしていたに違いない!などと想像してしまいました。

 「禁門を出入りすといへども、姓名を尋ねらるるに及ばず。」

 なにーーーーーっ!?

 内裏も出入りOK!?

 内裏って内裏って、どこだと思ってんの!?内裏ですよ!!

 参りました、禿。


 「おかっぱ頭で赤い直垂を着た十四五六の男の子」…って、こんなんか?

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 まあド派手。

 脛巾(はばき)まで赤にしたのはやりすぎだったか…(いちおう、暗めの赤にはしましたが)。脛巾をつけているという記述はないのですが、勝手に付けてみました。走り回ってるイメージがあるので、動きやすいように。あ、それだと手甲も付けたほうがよかったのか?

 色を塗ってみて思いましたが、赤い直垂は異様です。「異様な制服」という点では新撰組のダンダラ羽織に通じるものを感じます(あ、私は新撰組好きですよ)。

 この絵の参考にしようと Google で直垂を検索していたんですが、赤い直垂には出会えませんでした。それもそのはずで、そもこれは庶民や武士が着る服なので、色も紺とか茶といった地味なものがほとんどなんですね(鎧直垂の場合は別で、大将級の武士が赤を着ることが多いです)。そんな中を、こんな赤直垂がうろうろしてたら、そりゃ目立ったことでしょう。

 清盛は赤い色が好きだったのかなあ。そういえば平家の旗も赤だし。厳島神社も赤いし(強引)

 直垂(ひたたれ)は今の和服ともちょっと違うのでピンと来ないかもしれませんが、相撲の行司の方が着ている服です。

 ところでこの禿部隊のくだりを読んだときから「何かに似ている…」とずーっと気になっていたのですが、昨日やっと分かりました。そう!ヒットラー・ユーゲントです。

 なんじゃそりゃ、という人は手塚治虫の「アドルフに告ぐ」でも読んでくれればいいのですが、彼等もユダヤ人の家とかお店とかを壊して回ってました。これと一緒じゃないか、禿。年令も同じくらいだし。古今東西、権力者の思いつくことというのは共通しているということでしょうか。

 そういえばこの子達は平家都落ちのあと、どうしていたんだろうか?平家の犬だったことを理由にいじめられたりしなかったんだろうか?ちゃんと再就職できたんだろうか?おねいさんはそんなことが心配だ。

 …と思っていたら、彼等の一部はその後、義経のパシリに使われていたという記述がありました。節操ないな、君ら。

 ところで当時、京の町には京童(きょうわらんべ)という、定職にも就かずうろうろしているガラの悪い若者たちがいたのですが(今の東京にもいそうだな…)、もしかして禿とはこの京童を清盛がまとめて雇い入れたものか?とふと思いました。だとしたら清盛は無頼の若者たちに就職口を提供してやるという、すごく偉い人だ!ということになりますが、確証はナシ。
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by stan-nak | 2013-03-09 14:37 | 平家物語 巻一 | Comments(0)

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