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一輪奏

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by stan-nak

「一輪奏」ご案内 / About

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 当ブログ「一輪奏」(いちりんそう)は、平家物語やその周辺の作品について解説したり突っ込みを入れたり想像を膨らませたりしながら好き勝手に語る、平家ファンのブログです。ちょっとだけ創作もやってます。

 歴史的事実についての記載はできるだけ調べたうえで書いていますが、まだまだ勉強不足の点も多いため、間違っている点もあるかと思います。学術的な調べ物・探し物のお役には立てない可能性が高いですが、その点はどうぞご容赦ください。 Natsu拝

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 旧サイト開設日:2001年10月16日
 当初はジオシティーズでしたが、その後FC2に引っ越し、2013年3月にブログ化しました。

Thank you for visiting my blog.
This blog is about:
-Tale of the Heike (Heike monogatari)
-Tale of Hogen (Hogen monogatari)
-Tale of Heiji (Heiji monogatari)
-Amakusaban Heike monogatari (a colloquial version of Tale of the Heike, published in Amakusa, Japan by Society of Jesus in 1592) and its author, a Jesuit brother Fucan (or Fucansai) Fabian* (1565-1621).

*Also known as Fukan Habian or Fukansai Habian.

Blogger: Natsu
Twitter account: @Heike_gatari
E-mail address: stan-nak[]excite.co.jp (Please replace [] with an at sign. E-mail messages in English are accepted, but simple English would be appreciated.)


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# by stan-nak | 2017-12-31 23:59 | ご案内 | Comments(0)

ハビアン小譚(仮)2: 11

「わたくし、お尋ねいたいてござる。生きるのが面白うなったのなら、なぜお命をお捨てになれるのかと。そうしたら、殿がわたくしを武家の妻として信じておいでじゃほどに、と仰せでござった。『殿はわたくしを女として好いて下さってもいる。その思いに応えられたとは思えぬし、好く好かぬは必ずしも噛み合うわけではない。なれど、頼みにされれば応えいでは。わたくしは信を置かれながら、それを果たさぬ者ではいとうない』。そう、仰せになりまらした」
 そう言い終えたマリアの両肩の辺りが、心なしか緩んだように見えた。マリアの口からこの話を聞く人間は、自分が初めてなのではないか。根拠はなかったが、ハビアンは直感的にそう思った。
「ご立派でござる。信義をお守りあったとは」
 細川越中守の正室は、周囲がうらやむほどの見目かたちだとハビアンは噂に聞いたことがあった。が、その姿を見たことはない。当の越中守が、妻を人目にさらすことを異常なまでに嫌ったからだ。
「奥方様に仕え始めたとき、わたくしは21でおりゃった。それから14年、あのお方と一緒に時を過ごせて、よい仕合せであったこと。……わたくしなどよりずっと難儀に遭うてこられたに、誰かのせいになさることものうて、いつも御主(おんあるじ)のお言葉に向き合おうとしておいでで。仕え始めたとき、『そなたはキリシタンと聞くに、南蛮寺に行かぬのか』と仰せくださったのも、奥方様でござった。わたくしは奥方様をお守りしょうと思うていたに、一番の大事には、わたくしが助けられてしまいまらした」
 そこまで言うと、マリアは二人の間に置かれた火鉢ににじり寄って火箸を手にしようとした。身共が、と短く言い、ハビアンが埋み火を起こした。
「……じゃほどに、今からでも奥方様に喜うでもらえることをしたいと思うておりゃる。その時、ハビアン殿のおしゃっていた書物のことが思い浮かんで、そのご本を女人向けにお書きになってはいかがかと思いまらした。奥方様は殿が厳しゅうて、教会(エケレジア)でミサにあずかりたい、説教を聞きたいと思うても叶いまらせなんだ。そこまでではのうても、大名家のご内室というのは気安う出歩けぬ方が多いと聞きまらする。そのような人々でもキリシタンの教えを学べるご本があれば、きっと役に立ちまらしょうず」
「それで、身共に文を」
 マリアがくすりと笑った。
「なかなか。なれども、何やら無思案な書きぶりになってしもうたと、出してから思いまらした。お許しあれ」
「とんでもないことでござる。身共こそ、雪殿の文に力づけられてござれ。――女人のための書物とは、身共は考えたことがござなかった。例の本は仏僧や学者に向けて書くつもりでござったれども」
「ではそれが成ったら、調子を多少和らげ、女たちでも読みやすい物を書かれてみては」
「妙案と存じまらする。パードレがたにも、きっと同意していただけまらしょうず。早速ではござれども、明日からこちらへ参ってもよろしゅうござるか」
 マリアが返事をしかけたとき、庭に面した障子が静かに開いた。マリアが顔を上げる。その視線の先に、若い男が立っていた。狩衣(かりぎぬ)に烏帽子を着けた、20代と思しき青年である。

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# by stan-nak | 2017-01-18 21:32 | 小説「ハビアン小譚(仮)2」 | Comments(0)

ハビアン小譚(仮)2: 10

「雪、どの」
 マリアの顔には驚きが見て取れた。
「わざわざ、都まで?」
 ハビアン本人が来るとは思っていなかったらしい。その問いには答えずに、ハビアンは大股で歩み寄った。風呂敷包みを抱えたマリアの手を取った。
「ご無事でようござった」
 思わず力を込めて握ったその指は細く、肌は冷たかった。
「この度はまことに……何と申せばよいか」
「……いえ」
 手を取られたままで、マリアは戸惑っていた。その口元が、いくらか笑みの形になった。
「かたじけのう存じまらする。この通り、無事でござる」

 ハビアンは屋敷の一室に通された。小さく簡素だが、まめに掃除されているのが分かった。床の間には軸と花。白い山茶花だった。飾りらしい飾りのない部屋で、それが唯一と言っていい彩りだった。が、つぼみの方が多い。
「花、まだ開いておりまらせぬの」
「ええ。少しずつ咲いていくのを見ょうと思うて」
 火鉢を持ってきた白髪交じりの侍女が一礼して部屋を出ると、沈黙が訪れた。
 あんなに案じていたのに、いざ会ってみると何を話せばいいか分からなかった。悲痛だったに違いない出来事を、話題に出す勇気がない。喉のすぐ下に大きな堰ができて、言葉が出られなくなったかのようだった。
「いただいた貝殻、燃えてしまいまらした」
 マリアが口を開いた。
「え」
「ほら、天草でいただいた。大坂に戻ってから奥方様に差し上げまらしたほどに。あの貝が最後まで奥方様と一緒にいまらした」
 最後。その言葉が胸を締め付けた。
「……それは……」
「あの貝のお話、奥方様はお気に召してござった。貝殻も、いつもご自分の目に入るところに置いてござったほどに。ハビアン殿には感謝しておりまらする」
「そのような……身共はただ、何とお答えすればよいか分からいで、パードレから聞いたことをそのまま申しただけで」
「構いまらせぬ。奥方様も、離縁が叶わぬことはご承知でござった。何と言うか……それを受け入れるための理(ことわり)をお探しであったげに思いまらする」
「身共はそのお役に立てまらしたろうか」
 ええ、とマリアがうなずいた。ハビアンはマリアの顔ばかりじろじろと見るのが気まずく思えて、手ばかり見ていた。
「お果てになる前日に、わたくしは暇(いとま)を出されまらした」
 ハビアンが視線を上げた。声が、胸の奥深いところにしまい込んだ箱から初めて外に出されたように聞こえた。
「その時、この貝を持っていてもよいかと尋ねられて、死ぬお覚悟じゃと分かりまらした。お止めいたしまらしたれども、奥方様は仰せでござった。父が謀反人となって、山奥に閉じ込められた時、これは死んでいるのとどう違うのかとまで思うた。それが細川屋敷に戻って、そなたがやって来てから、一日一日を生きるのが面白いと、ま一度思えるようになった。そなたは大切な恩人じゃほどに、共に死ぬようなことがあってはならぬと」
 ハビアンは相づちを打ちながら聴いた。だがマリアはそれが耳に入っているのかいないのか、まるで独り言のように話し続けるのだった。

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# by stan-nak | 2017-01-14 23:24 | 小説「ハビアン小譚(仮)2」 | Comments(0)

ハビアン小譚(仮)2: 09

 12月の初め、ハビアンは数年ぶりに船上の人となり、瀬戸内海を渡った。
 上(かみ)に向かうのは、21歳で大坂を離れて豊後に赴いて以来だった。臼杵のノビシアドに入ってから14年間、ハビアンは肥前や肥後を転々としていた。九州を出たのは、戦乱を避けて一時的に山口に身を寄せたときくらいだ。
 海面が鈍く光る。ハビアンは志岐のトマスと一緒に船に乗ったときのことを思い出した。コレジオが天草を離れる年まではたびたび会っていた。志岐にいる会士たちだけでなく、ハビアンやバレトが本を貸したり、初歩的なラテン語やポルトガル語を教えたりした。母のモニカに楽をさせようと漁師の手伝いもしていたようで、コレジオが移る年には精悍な18の若者になっていた。学問だけが取り柄と言っていい自分よりも、よほどたくましく見えた。
 今でも荒木トマスと名乗っているだろうか。肥前名護屋に行ったときは、法衣ははばかられて、侍のなりをして行ったのだった。
 秀吉が死んで変わったことの一つは、修道服のまま遠出できるようになったことだった。13年前の伴天連(バテレン)追放令以来、イエズス会は秀吉を極力刺激しないよう慎重な行動を徹底し、修道服で出歩くのもキリシタンの多い地域だけにとどめていた。日本布教歴の長さから編み出した方針だった。
――仮にフランシスコ会のパードレがたもそれに倣い、目に付く振る舞いを控えていたなら、あのような殉教(マルチリヨ)もなく、パウロ殿らイエズス会士が命を落とすこともなかったのではないか。
 そんな考えがハビアンの頭をよぎったが、過ぎたことだった。いずれにせよ、自分に何ができたのか。結局、いつもその問いに戻ってくる。西坂の丘で刑場に駆け寄ろうとして警固の武士に押し返され、ただ呆然とするばかりだったではないか。少なからぬ者が賛美歌を歌っていたことさえ、後で人から言われるまで気付かなかったではないか。
 パウロはおのれの魂(アニマ)が大きな御手の中にあると信じていたから、地上から旅立つことは恐ろしくなかったのだ。その信仰(ヒイデス)に難癖をつけるつもりは毛頭ない。一方で、血に染まった26の十字架が並ぶ有様は、重く沈鬱だった。
 乗り合わせた客が小声で何か話している。「南蛮坊主」という言葉が耳に入ったが、聞こえていないふりをした。

 都入りしたハビアンは上京のレジデンシアに寄って足を洗い、道中の汚れを落としてから清原邸に向かった。マリアの父、枝賢(しげかた)はすでに世になく、子息の国賢(くにかた)が現当主だと伝え聞いていた。
 屋敷と言っても清原家のそれは控え目だった。門番らしき者もいない。屋敷を囲む築地塀の上に、濃い色の葉を茂らせた山茶花が枝を伸ばしている。白い花がいくつか咲いているのが見えた。まだ昼過ぎだったが、12月の日を浴び、塀も植木も通りに長い影を作っていた。
「物申(ものもう)。案内申(もう)」
 扉を叩いて声を掛けた。が、返事はない。もう一度叩こうとしかけたとき、塀のこちら側から声が聞こえた。
「ハビアン殿?」
 築地塀の前の道を、こちらへ歩いてくる女があった。被衣(かづき)にしていた着物を女が持ち上げると、顔が見えた。もっとも、今さら顔など見えなくともよかった。声はハビアンの記憶の中のそれと、変わっていなかったのだから。

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# by stan-nak | 2017-01-10 20:30 | 小説「ハビアン小譚(仮)2」 | Comments(0)

ハビアン小譚(仮)2: 08

 細川忠興の妻、ガラシャが石田三成の人質になることを拒んで死を選び、大坂玉造の細川屋敷が焼け落ちたという知らせが長崎に届いたのは9月になってからだった。
 岬の教会でその報に接したハビアンは、目の前が真っ暗になった。侍女たちは屋敷を脱出した、あるいは前もって暇を出されたといった風聞が耳に入ってきたが、いずれも錯綜していた。確かなのは細川の奥方が天に帰ったということだけだった。
 こんな所にじっとしていいはずがない。一刻も早く駆けつけてマリアの安否を確かめたい。ハビアンは気ばかり急いたが、都へ行きたいという願いは聞き入れられなかった。

――上(カミ)にはパードレ・オルガンチノがいるのだから、知らせるべきことがあれば手紙が来るだろう。そもそも今回の件は戦争が近いからこそ起こったことで、旧知の者の安否を確かめるためとはいえ、戦場になるかもしれない場所へ貴重なイルマンを行かせるわけにはいかない。

 メスキータが挙げた理由は至極もっともだった。そうこうするうち、中央での衝突に呼応するように、九州でも大名たちが戦端を開いた。うかつに移動もできず、マリアの生死も分からない。ハビアンは生きた心地がしなかった。本の執筆など手につかず、暇さえあれば祈った。眠りの浅い夜が続いた。ようやく寝付けば悪夢を見た。
――五月の若木のように生気にあふれた方を、真っすぐな聡明さに恵まれたあの方を、どうかまだ天にお召しになりまらせぬように。あの方の命の木を、まだお切りになりまらせぬように。
 どれだけ祈っても、十分だとは少しも思えなかった。

 11月が終わりに近づいたころ、ハビアンの元に一通の手紙があった。短い内容ながら、その筆(て)はハビアンの頭の中を絶えず占めていた人物のものだった。
――奥方様のお果てになったことはお聞き及びと存じます。私は京の実家に戻っております。以前お話のあった書物の件は、もう取り掛かっておいででしょうか。清原の文庫に人をお遣わしになるなら、いつでも使えるように取り計らっておきます。
 読み終えて、ハビアンは自分がひどく愚かに思えた。あの知らせを聞いてから二月以上、ハビアンはただ逡巡し悶々とするばかりで、一歩も前に進んでいなかった。そのハビアンにマリアは、あの本のことはどうしたのかと問うている。つらい目に遭ったのは向こうだろうに、なぜか自分が叱咤されている。
〝ハヒアンとのへ 雪〟
 そう書かれた署名を、ハビアンは指でなぞった。都へ行かねばならない。迷いなくそう思った。本のことを、マリアは気に掛けてくれている。にもかかわらず人を遣わすだけで済ませば、不実だと思った。

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# by stan-nak | 2017-01-10 20:16 | 小説「ハビアン小譚(仮)2」 | Comments(0)
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